インド食堂 TADKA 京都

うだるような暑さ、とまではいかないまでも結構な湿度と暑さだ。まさにカレー日より! 6月の最終週、久しぶりの太陽に照りつけられながら、まとわり着くような湿度の濃い京都路を歩く。時間はもうすぐ13:00になろうとしていた。烏丸御池駅から歩いて2、3分のところに、インド食堂TADKAを見つけた。ドアを開けて中へ入る。クーラーで冷えた空気が、ここちよい。女性の先客が1人だけいるようだ。店内は、あまりインドインドしておらず、インド食堂というよりは、カフェのような印象だ。どうやらここは、先に会計をするらしい。ここまで来たのだから、やっぱり一番豪勢なやつでしょ。3つのメニューの中からスペシャル1480円を選ぶ。スーツ姿の私を見て、クーラーの効いている席を案内してくれたのだろうか。店の一番奥の席を案内してくれた。
5分ほどあとに入店してきた 30代後半くらいの 男女のペアが、となりのテーブルに座った。楽しそうに会話をしている。恋人同士ののようでもあるし、そうでないようにもみえる。微妙な感じだ。それほど待たずしてわたしのカレーが運ばれてきた。大きな金属製のプレートの中に、中央にピクルス、手前にライスと奥に3種類のカレー、副菜、ヨーグルトっぽい何かが盛られている。エスニックーカレーを食べる時、いつも自分のボキャブラリーの少なさを嘆く。数種類のカレーが出てくると、もうお手上げだ。味を表現する言葉がみつからない。すべてスパイシーだし、すべて旨い。どうすればこのスパイスの調合の違いを表現できるのか……。言葉で表現できないことがもどかしくて仕方がない。とにかく3種のカレーを表現するなら、チキンの入ったコクのあるやつ。野菜のはいった酸味のあるやつ。具が殆どはいっていない、黄色いサラサラのやつとなる。チキンのやつから口へ運ぶ。おお! きたきた、トリップカレーだ。トリップカレーとはその風味が絶妙で、まるでその味のルーツとなった街並みに自分がいるような感覚に陥るカレーのことをさす。私の中では、最上クラスの褒め言葉となっている。一つ一つの味もさることながら、この3種のカレーがプレートの上で混ざり合い、副菜とヨーグルトがそこに加わった時、これまでとは異次元のカレーがそこに出現する。かれこそが、このカレーの真骨頂なのかもしれない。そういえば、さっきから隣のカップルの会話が止んでいる。聞こえてくるのは、カツ、カツ、カツっと、スプーンとプレートの金属同士がぶつかりあう音だけだ。まちがいなくインド食堂 TADKAはトリップカレーに認定だ。
追伸
近いうちにスパイスとエスニックカレーの本を買い込んで、カレーの味の表現を研究してやろうと心に誓うのだった。