ジュワーーー!
高温でスパイスを炒める旨そうな音が聞こえてきた。気合い十分といった感じだ。それにしても、バンブルビーの強面のマスター。カレー屋の店長というより、テキ屋のおっちゃんといった印象だ。新聞に掲載されている柔和な写真とは別人のような印象だ。じっくりメニューを眺めている暇はなさそうだ。
注文したは3色カリー。ナスきゅうりインゲンのカレー、とりキーマ、マトンキーマというラインナップだ。マトンはスパイシーですよと心配されたが、「大丈夫です!」と言い切った。標準メニューで、ボンベイのカシミールほどスパイシーなカレーに出会ったことはない。大丈夫なはずと、過去の経験が物申す。それほど待たずしてカレーが出てきた。
熱々の湯気が立つ。香りも立つ。やばい、うまそうだ。まず、ナスきゅうりインゲンのカレーからトライだ。一口目を口に入れる。おや? っと一瞬その口当たりよよいあまみに油断する。しかし、次の瞬間ピリリと刺激がやってきた。甘みの奥にキリリとしまるスパイスが隠れていたのだ。なるほど、油断をさせておいて不意打ちとは、なかなかですな。
とりキーマはどうか? 自然な甘みの中にスパイスの宇宙が広がる。おお! これはまたストレートなスパイスワークだ。
そうくるとマトンキーマも気になってくる。見た目焦げ茶のルー。辛そうだ。一口目を口へ運んだ。最初に来るのはマトンのワイルドな香り。香りが鼻腔を突き抜けていく。そして、ダークな苦味が食をそそる。ライスが旨い。さらに後からじわじわと、分厚い津波のように、スパイスの辛さがやってきた。いいね。いいね。額と上唇と鼻のあいだに汗が吹き出してきた。普段からカレーを食べ慣れているせいで、カレーを食べてもあまり発汗はしない方だが、いい感じで身体が反応する。この男気溢れるスパイスワークは、なかなかです。
ごちそうさまでした。