旧ヤム邸 谷町六丁目 大阪

谷町線の谷町六丁目駅でおりて、空掘商店街をズンズンあるく。だいたい100mほど歩くと右側に旧家屋のお店を発見できた。どうやらここが旧ヤム邸 谷町六丁目店らしい。お店の前に出された看板に今日のメニューが書かれている。カレー膳は、カボチャのせバルサミコ煮とアジョワンコルマ鶏キーマ、ここ夏レモンカレー、豆苗とシャケのごまサラダ spaicマトンキーマだ。合いがけと全がけから選べるようになっている。どうやらカレーライスの方は既に売り切れてしまったらしい。

もしかしたら並ぶかもしれないと構えていたが、並ばずに入ることができた。薄暗い店内にはジャズが流れている。土間にテーブル3台と、家にあがった右側にカウンター席が3、そして二階席という間取りになっていた。席に着くと、迷うことなくカレー膳の全がけを注文した。10分かからずに、カレー膳が運ばれてきた。黒っぽいアーモンド型のカレーの器に、副菜が4点ついている。カレーは右から、ここ夏レモンカレー、真ん中にライスとその上に豆苗とシャケのごまサラダ spaicマトンキーマ、最後にカボチャのせバルサミコ煮とアジョワンコルマ鶏キーマと並んでいる。それぞれ順に口へ運ぶ。うーーん、旨い! 特にココ夏レモンカレーはニンニクの香りがちょうどよく、食欲を煽る。のこりのキーマ達もいい役を演じている。

そして、全がけの真骨頂はここからだ。右のキーマを左へ、左のキーマを右へスプーンで混ぜながら食べ進む。すると今まで個々に個性のあったキーマ達が、ちょうどいい具合にブレンドされ、一つのキーマへと変容していく。もはや食のメタモルフォーゼと言ってもいいくらいだ。しかし、不思議だ。スパイスカレーは混ぜるほど美味しくなっていく。じゃあ、初めから混ぜればいいじゃないかと野暮なことをいう輩もいるがそうじゃないんだ。それではせっかくの合いがけが台無しになってしまう。合いがけは、カレーを味わうというよりのこの変化の過程を楽しむと言っても過言では無い。元々別々の味だったものが、皿とう舞台の上でそれぞれの妙味を見せた後、渾然一体となりあらたなドラマを見せてくれる。ポイントは、混ぜるとうまさが増すというところだ。混ぜればどんな料理でも上手くなるのかといえば、そんなことはない。そばとうどんを混ぜたら旨くなるのか? やったことはないが多分それぞれの良さを打ち消してしまう結果になりそうな気がする。そこに相乗効果は生まれにくいのだ。

しかし、スパイスカレーときたら……。そしてここのキーマカレー達ときたら……。もう何もいうことなく無言でスプーンを口へ運ぶのみである。

今日もごちそうさまでした。

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