思いがけない出会いとは、こういうことなのです。羽田空港の保安検査ゲートの向こう側。熊本行きの10:00のフライトまで30分程時間があったので、コーヒーを買おうと売店に立ち寄りました。小銭で310円を払いレシートを受け取った時に、カウンターの上に思いがけないものを見つけたのです。まさか場所で出会うとは。それはこがねもち大福でした。ああーどうしよう。もう会計が済んで小銭入れはしまってしまいました。しかも、後ろに人が並んでいます。こんな時いつもの私であれば、後ろの人に気をつかってしまい、自分の欲求を押し殺して、その場を離れるのです。しかし、今回は違いました。今までに見たことのない大福のパッケージ。わかっています、わかっています。空港の売店ですから、手作りの大福よりおいしい大福ということはないでしょう。だけど、大福ハンターとしては、このまま引き下げるわけにはいきません。まずは大福を手に取り、製造業者をチェックします。株式会社宮野食品工業、所在地は新潟県新発田市とあります。米どころ新潟ではありませんか。もう文句なしに合格です。とりあえず、後ろに並んでいた男性の会計が終わるのをやり過ごします。そして、コーヒーの会計を済ませたばかりで、「あら、大福を買うために戻ってきたの?」と思わるんだろうなという、気恥ずかしさをこらえつつ「すみません、これもください」と、売店おおばちゃんへ声をかけたのでした。
「新潟県産こがねもち、北海道産あずき100%」というシールが貼られたパッケージを、ギザギザのところから切り裂いて中身を取り出すところの幸福感にひたりながら、大福をほお張ります。うん、確かにこがねです。その弾力のある歯ごたえには間違いはありませんでした。ただ、その味自体には突出した特長はなく、おおかたの想定内のお味。それよりも、幸先のよい旅の始まりを告げる、素敵な出会いに感謝をする私でありました。