池袋サンシャイン60に仕事できている。ランチタイムになったのでカレーを食おうと、カレー屋を探した。池袋なら美味しいカレー屋もあるだろうと思っていたが、スマホで検索してみると意外と少ない。そんな中、評判の良さそうなカレー屋を見つけた。それがエーラージだった。スマホで住所を頼りに向かっていると、上を首都高が走る大通りに出た。地下には有楽町線の東池袋駅がある交差点だ。すると、通りの向こうの高架下にインドカレー屋が見える。あそこに違いない。信号が青に変わり通りをわたって、店に近づいていくとそれはエーラージではなくダイマスという看板がかかっていた。
おかしいなと思いながら辺りをうろちょろしていると、通りを一本奥へ入った裏通りに黄色に塗られた外観のお店を見つけることが出来た。店の中の雰囲気は、昔の喫茶店をインド風に改装したような印象だ。メニューは、単品のカレーからミールスも揃っている。私は、ベジミールスを頼むことにした。ライスは大盛りで。最近思うことがある。普通盛りのライスの量が店によって、ガッツリ系で多いのか、上品系で少ないのか、初めてではわからないということだ。だから、大盛りを頼んで、ちょうどいい時もあるし、多くて食べるのが大変な時もあり、加減が難しいのだ。ただ、私の統計ではミールスの場合、ご飯の量は上品系のところが多い。
さてさて、やってきたミールスのライスはどうか? 量はちょうど良さそうだ。加えてパパドとボールのようになった揚げパンがついてきたので、結構な食べ応えになりそうだ。そんなことをかんがえていると、隣のテーブルでミールスを頼んだ人にも、それが運ばれてきたようだ。お店のお姉さんがそれぞれ小さな器に入った料理の説明を始めた。あれ? そういえば私には説明がなかったな。まあ、聞いたところで味は食べてみないとわからないのだが、せめてどのようなもの食べているのかくらいは知っておきたいと思った。あとでメニューを確認すると、サンバール(野菜入り豆カレー)、ラッサム(スープカレー)、ヨーグルト、豆カレー、ボリアル(炒め物) と書かれていた。
ミールスを食べる時、小さな器から一口分の量をスプーンですくい、ライスにかけて食べる人が多い。器を持って食べる文化の日本人からすると、何も違和感がない。しかし、これはインドの定食だ。手で食べることが前提となっている料理なのだ。手を使い、ライスとカレーを混ぜ合わせながら口へ運んでいく。現地で食べたことはないが、器に入った状態でなく、バナナの葉の上のったご飯にカレーがかかった状態で出てくるはずだ。それらを手で混ぜて食べる料理なので、そもそも混ざっても美味しいように計算されてスパイスも使われている。
だから私は、まずはぶっかける。それぞれの器に中に入ったカレーを、ライスの周りに次々と。始めはそれぞれ味の違いを楽しみながら。そして、次第に隣どおしのカレーをまぜ、最後には全てを混ぜ合わせて食らう。そして、よく作られているミールスほど、後半になればなるほど、様々な味とスパイスの香味が混じり合い、旨さをましていく。これがミールスの醍醐味なのだ。
私は、ベジミールスを食べ始めた。一つ一つの味を確かめるように。そして儀式のように隣通しのカレーをまぜる。次第にスプーンの回転速度が上がっていく。最後は全てを混ぜる。スプーンが金属プレートの底をかいた。もうそこにはカレーは残っていなかった。満足感が体を満たす。しばらくこの満足感に浸っていたい。そう思った。