「もりやま屋というカレー屋さんが美味しいらしいですよ」。オフィスの隣席に座っている、年下の女性が、そう教えてくれた。
「あ、そうなの! 今度大阪出張の時に行ってみるわ」。それがもりやま屋へ行ってみようと思ったきっかけだった。
梅田での打合せが18:00におわり、夕飯にはちょうどいいい時間だ。食べログで周辺のインドカレー屋さんを探す。何軒か候補が出てきたた中に、もりやま屋もあった。そういえば彼女が言っていたお店だと思いだした。場所を調べてみると今いるドンキホーテ梅田本店からだと、微妙な距離感だ。歩くと遠いし、最寄駅とおぼしき大江橋駅からも、中途半端な距離。タクろう。私はタクシーを捕まえ運転手に大阪地裁まで言って欲しいと伝えた。
大阪地裁の近くでタクシーをおりて、敷地沿いへに南へ少し歩くと右手の路地にお店を見つけた。ゆっくりとドアを開ける。カンカン照りの暑い外とは対照的に、照明を落とし冷房が効いた店内。ジャズなのかソウルなのかよく知らないが、古そうなレーコードが壁側に並び、センスのいい店主の趣向が垣間見える。一番手前のカウンター席に腰をおろし、チキンカレーの大盛りを注文した。どこか飄々とした感じのある店主だ。何者なのか気になってしまう。私より少し後に入ってきた男女2名づつの4人グループが、カウンター席の私の左側へ座った。会社帰りのようだ。人のよさそうな男性を、女性たちがディスりはじめた。大阪ではこれが日常会話なのだろう。4人とも楽しそうである。
カレーが運ばれてきた。ライスがこんもりと盛られさらにそのライス全体にまで褐色のルーがかかっていてゴツゴツとした岩山のようだ。まずはルーを軽く救って味見。うん、なるほど。見た目ほどは辛くない。どちらかというとマイルドなほうだ。辛さが欲しい場合には、一緒にだされた小皿のスパイスを足せばいい。甘み、酸味、スパイスのバランスがよく、優しい感じを受ける。店主の人柄をあらわしているようだ。黙々とカレーを口に運ぶ。そしてカレーを食べながら気になる。
隣の席の人が頼んだラッシーがとてもおいしそうに見えるのだ。コーヒーではなく、あれを頼めばよかったと後悔した。そういえばチャイも美味しいらしい。ドリンクの値段を考えるとちゃんと作っているに違いない。迂闊だった。値段を見た時に気付くべきだった。うーん、コーヒーが美味しくないというわけではないが、今回はドリンクの選択を間違えたようだ。次はラッシーを飲もう。