「あっ、はい。そうですね……。仕入れに関しては……、どうもすみませんでした。はい、よろしくお願いします。」
店内から、電話で話しをする男性従業員の声が聞こえている。時刻は11:20。ビルの階段を登って、2Fにある入り口まできたところだ。既に開店しているようにみえる。もう、お腹はペコペコだ。店のドアの向こうには、格子状に区切られたガラスをとおして、こちらに背を向けて電話をしている従業員がみえる。外に漏れていたの声の主だった。
ドアを開けると、入り口のレジカウンター付近で電話をしている従業員が振り向いた。その日本語の話しぶりから、てっきり日本人だと勘違いしていたが、なんとインド人の方だった。私が入店したときもまだ電話中だったので、常連客を扱うように目で席を案内してくれた。このあたりはインド流というわけだ。
ビュッフェスタイルなので、早速皿に料理を盛り付けてくる。シメジ・チキン・キーマカレー、ダル・カレー、 アンブル・マトンカレーなど、カレーらしき料理は5品ほどあったが、それらをすべてカレーと呼ぶのかはわからない。それから、サラダやタンドリーチキンまである。まずはシメジ・チキン・キーマカレーからそれぞれ、味を確かめていく。正直、私は驚いた。とてもレベルの高いカレーだ。そもそも、ビュッフェスタイルのカレーには、それほど期待をしていなかった。なぜなら、それは量で客を満たすためのもので、味で客を満たすためのものではないと思っていたからだ。ビジネスの原理から言って、食べ放だいということは、出来るだけ原価をおさえて作ろうとするので、味はどうしても後回しにされがちになる。1200円のビュッフェなので下手をすると、値段的には普通のインドカレー屋さんのメニューにある一品の値段と大して差がない。なのにこの旨さ。行列が出来るのも納得できる。
11:40頃に入店したので、そのころはあまりお客さんがいなかったが、12時を過ぎてくると、かなり混んできたようだ。テーブルから入り口の方を振り向いてみると、受付から外に行列が出来始めているのがみえた。そりゃそうだ。このバラエティーと味がビュッフェスタイルで味わえるなんて贅沢なランチだ。
ニルワナム。そこは、味を楽しみたい人、とにかくカレーを沢山食べたい人、このコストパフォーマンス上相反する要求を、同時に満たしてくれる稀有なお店だった。