大崎で見つけたアヒリアはコスパが高かった。

いやー寒い。気温8度。こんな寒い日はカレーを食いたくなる。もちろん暑い日でもカレーは食いたい。ちなみに、カレーはスパイスの発汗作用によって、一時的に体温はあがる。けれどもその後体温は下がり、結果的に食べる前より体温は低くなる。暑い国の食べ物は体温をさげるのである。とまあ、そんなウンチクはどうでもよくて、今日はカレーなのだ。

大崎で商談があってゲートシティーまでやってきた。大崎というと再開発によって新しいビルが立ち並び、美味しいカレー屋なんて無さそうなイメージがあった。でも、探してみると一件だけ評判のいい店があった。それが北インド料理のアヒリアだ。

場所柄、駅直結のゲートシティーの中にはテナントが沢山入っていて人も多い。一方、表通りには店がないので人っ子ひとり歩いていない。通り沿いにあるアヒリアの前まできても、人が入っているようには見えなかった。

ドア前の看板には、本日のメニューが書かれていた。

【本日のカレー】

  1. チキンチヤトナール(南インドスタイルのチキンカレー)
  2. プロンカレー(エビカレー)
  3. アルシマ(ポテトとインゲンのカレー)

あれ? 北インド料理なのに南インドスタイルって、北海道ラーメンの店に行ってソーキソバを食うようなもの? まあいいか……。

店内は天井からシャンデリアがさがり、落ち着いた雰囲気。厨房ではインド人らしき料理人が3人動き回っている。店員もインド人らしき海外の方々で日本人スタッフはいない様子。そして、いったいどこから湧いて出たのか、外の閑散とした感じとはうって変わり、カレーを食べにきた人でごった返している。私は中央の三角型の8人がけのテーブルに案内された。他のテーブル席はゆったりしてマハラジャ感があるが、このテーブルはやけにお隣さんとの距離が近かく、やけに大衆的だ。なんだこのギャップは。まあいい。私はメニューを覗きこんだ。

【メニュー】

Aセット カレー1種/サラダ/タンドリーチキン/ライスorナン
Bセット カレー1種/サラダ/タンドリーチキン/ライスorナン
Cセット カレー2種/サラダ/タンドリーチキン/シシカバブ/パパドゥ/ライスorナン/ドリンク

「すみません」私はホールの男性スタッフに声をかけた。
「Bセットで1のチキンカレーと3の野菜カレーで」
「1と3ですね。ナンとライスは?」
「ライスで」
「ありがとうございます」

店内の様子を観察しながら待っていると、少しして先ほどの店員さんが肩越しから聞いてきた。

「すみません、1と2ですか?」

「いえ、1と3です」

そう答えると、わかりましたという感じで去っていった。そして、数十秒程すると、また肩越しから話しかけられた。

「すみません。ナンですか?」

「ライスです」

テンパっているのだろうか。それとも日本語に不慣れなのか。全く把握していないアバウト感が、インド的で面白い。

そして、ようやく金属製のお大きなプレートにのったカレーと白いさらに盛られた薄黄色のライスがやってきた。まずはカレーだけをスプーンですくい味見をする。チキンカレーは、トマトの自然な酸味と玉ねぎの甘さ。スパイスの加減も塩加減も丁度よく仕上がっている。このサラッとした感じが南インド風だ。

野菜カレーは、チキンカレーとは違った酸味がある。色から判断するとトマトではなさそうだが一体なんの酸味? これがまた食欲を後押ししてくれる。そして、見た目は大人しそうな振りして、後からやってくる辛さは結構意外。チキンカレーよりも辛いかもしれない。これにサラダとタンドリーチキンがついて、さらにライスかナンがお代わりできるとは驚きだ。この味とボリュームで1000円程とは。そのコスパの高さに思わず笑みがこぼれた。

大崎へきたらアヒリアへ。マストなカレー店だ。