三茶カリー ZAZAは穴場的だった。

本当は、別のカレー屋へ行こうと思い三軒茶屋へやってきた。三茶しゃれなあどを北北西へすすみ、西友の前をとおり坂を下っていき、目的のカレー屋につくと行列が出来ていた。しかも1時間くらい待ちそうであった。今すぐにでもスパイスを注入したい禁断状態なのに、そんな我慢して並んでいたのでは体にも悪いに違いない。そこで、標的を変更し246の反対側にある、カレー屋を目指すことにした。

しかし、これは誤算だった。正午を過ぎているというのに、まだ店が開いていない。一瞬休みなのかとも思ったが、ドアには張り紙で仕込み中の文字。中に人がいる気配もある。マジか。今開けなくていつ開けるんだ! 叫びたい気持ちを抑え考える。

ふと隣の洋食レストランのショーウィンドウに陳列されていたカツカレーのレプリカが目に止まった。私はカツカレーに心を奪われた。そんな私の心を見抜いたのか、中から女性の店員さんが現れて

「どうぞ中へ」と笑顔で誘ってきた。

万事休すか……。ここで白旗をあげて欧風カツカレーに屈してしまおうと本気で思った。しかし、そこで私は踏みとどまる。いや、無意識に体が動いたという方が近いかもしれない。その刹那、先ほど私が見た看板が脳裏に浮かんだのだ。「三茶カリー ZAZA」。

三茶カリー ZAZAは、最初の目的地になっていたカレー屋のほぼ真裏にあった。しかし、互いに近接しながら一方には行列ができ、一方には行列ができていなかった。その見た目だけの判断で、ZAZAをスルーしていたのだ。にもかかわらず、洋食レストランのカツカレーの誘惑にオールモストで負けそうになった時、体が反応したのだった。このようにして、私は再びR246を渡り三茶しゃれなーどを下っていった。ZAZAのカレーを食べるために。

2階の店舗へあがる狭くて急で薄暗い階段を登った。明るい表から入ってくると、ことさら店内は暗く感じる。えっ、私はすこし面食らった。店内が満席だったのだ。

「空いている席へどうぞ」とカウンター内のお兄さんが声をかけてくれた。よく見ると、カウンター席がかろうじて一つ空いている。席が空いていたことへの嬉しさと、想定外に客が入っていたことによる期待感が湧き上がってくる。もしかしたら、結構当たりなのでは。カウンター席についた私は、早速メニューを覗き込んだ。

【メニュー】

チキンカリー 900円

ポークカリー 1000円

ドライカリー 900円

ここは、当然看板メニューのチキンカレーを選ぶ。店内には、アグレッシブなソウルミュージックが小気味好くながれている。カウンター内のお兄さんは、リズムに合わせて頭をスウィング。ご機嫌じゃないか。店内をよく見渡すと、ソウルやファンクに関する書籍が本棚に並び、レコードまである。あっ、レコードプレーヤーか。今流れている音はレコードだったんだ。なんて、ソウルふなカレー屋なんだ。ますます、カレーへの期待感が高まる。

運ばれてきた途端にカルダモンの爽やか香りが鼻腔をくすぐる。それに反応するように胃袋がギュルルと鳴いた。オッケー待ってろ。すぐにカレーを送り込むから。

ほろ苦さがグッとくる! たまらない。独特のスパイス使いが、味に独特の深みを与えていて、食欲をグイグイ引っ張る。辛さはというと、それほど辛くなくて辛いのが苦手な人にも比較的食べやすいレベルに仕上がっている。こんがり焼かれたチキンは、特製スパイスで味付けされていて、ホロッと崩れる柔らかささは、サラっとしたカレールーと相性よりし。

カレーについてくる濃厚なラッシーは、手作り感がにじみ出ている。それほど甘くなくないので、甘いものが苦手な人にも飲みやすく仕上がっている。そして、ヒリヒリした胃袋を優しくいたわってくれる優しさがいい。

これほどの、味に仕上がっていてそれほど混んでないというのは、穴場的なカレー屋だ。おそらく裏手に超人気カレー店がある影響もあるとおもうけど、コスパは断然高いのであった。

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