【インド旅行編】ティルバンナマーライの地を踏む。

まだ夜も明けきらない早朝。祈りの放送で目が覚めました。日本でいえば町内放送のスピーカーからお経が流れるようなものでしょうか。ヒンドゥーなのかイスラムなのかわかりませんが、男性の声で歌うような祈るような声が流れています。カーンチープラムで迎えた朝は、異国間が半端ありません。

昨日私たちは、ニューデリーから南のチェンナイへ国内線で3時間のフライトを乗り継ぎ、チェンナイから2時間半かけて、カーンチープラムへやってきました。ここは、チェンナイから南西に70Kmほどの地点にあり、目的地のティルバンナーマライまではあと150Kmほどあります。

早速朝の散歩といいますか、朝の町の雰囲気を感じたくて妻さんとストリートへ出てみました。通りではレッド、イエロー、ブルー、グリーン、パープルなど色とりどりのサリーを着た女性たちが、竹箒に似た植物性の箒で道路を掃きながら移動していました。

すると、わたしたちの前を掃いていた女性が、現地の言葉で挨拶をしてきました。「おはよう!」とでも言っているのでしょう。こちらはグッド・モーニングと返します。言葉が通じないのに何人かが集まってきて話しかけてきます。昨日から全く東洋系アジア人を見ていないので、このあたりでは日本人が珍しいのでしょう。それにしてもインドの人は好奇心旺盛で人懐っこい。

私はホテルでの朝食(当然カレーです)を済ませ、通り沿いにある食堂で地元の人に交じって一人チャイを飲み始めました。食堂に入ってくると殆どの人が「おっ」という感じで、この東洋人に視線を止めます。肌の色が違うし着ているものも違うので、場になじんでいないのがわかります。この東洋人を一瞥したあとは、皆平然と日常のルーティンに戻り、何かを注文したり新聞を読んだりし始めるのでした。食堂が混んできて、4人掛けのテーブルに1人で掛けていた私の向いに初老の夫婦が座りました。しばらく食事をしていた夫婦がどちらからともなく片言の英語で話しかけてきました。

「どこへ行くんだい?」

「ティルバンナーマライへ」

私はちょうど読んでいたラマナ・マハリシの本を彼らに見せました。

「ああ、ラマナね」と、彼らも反応します。
この辺のインドの人にとっては当たり前のように、マハリシは有名人なのでした。

隣のテーブルでは白髪がドレッドになりかけている初老の男性が、手にした白い小さな紙を長い間見つめています。さもそこに重要なことが書かれているかのように。しかしそれは、さっき店員さんが持ってきた彼のオーダーした伝票です。インドの人は何の変哲もない些細な日常から神の啓示を受け取ることができるようでしょうか? 男性はかなり長い間伝票を眺めたあと、思いついたように立ち上がり、入り口にあるレジで会計を済ませ今日が始まったばかりのまぶしい喧騒の中へと消えていきました。さて、今日はいよいよティルバンナーマライへ向けて出発です。

バスに揺られること約4時間。まだ明るいうちにティルバン・ナーマライに到着した私たち。ホテル(というよりは民宿)に荷物をおろし、今回の旅の最初の目的地、でもあるラマナ・マハリシ アシュラムへ向かいました。このアシュラムは、聖地アルナーチャラ山の麓に建立されています。

入口の門をくぐって中へ入ろうとすると、守衛さんらしき人にチョイとチョイと、と呼び止められてしまいました。なにごとかと思っていると、履物を脱ぎなさいと言っています。どうやらアシュラムの敷地内は履物が禁止らしく、よく見るとみなさん門のところで履物を脱いでいました。入場者の半数くらいは、そもそも履物を履いていないのですが……。

石造りのアシュラムの中は、天井につけられたいくつものファンが勢い良く回っていて、熱気が漂う外とは対照的に、涼しさが漂っています。中は小学校の体育館ほどの広さがあり、奥の方に石のお社のようなものがありました。あちらこちらの壁面には、マハリシの大きな写真がかけられていて、仏像を拝む日本のお寺とはだいぶ様相が異ります。お社の周りは回れるようになっていて、巡礼者は時計回りにぐるぐるとその周っています。何周まわるのか? どんな意味があるのかは全くわかりませんが見様見真似で回ってみます。これでご利益があるに違いありません。

アシュラムからのかえりに、近くの食堂で夕飯を食べました。ビリヤニに、パニールというチーズがはいったマサラカレー、ダルカレーを注文しました。ここ数日、インド料理を食べていますが、想像していたほど辛くないことがわかりました。全体的にスパイシーではあるものの、食べられないほど辛いものはありません。辛いものが苦手な中二の娘も、美味しく食べることができています。

まだ、旅は始まったばかりですが、文化や習慣の違いに驚かされています。まず、驚かされるのが町の音です。交通ルールなんてあって無きようなこの国。みなさんどうやって運転しているのかというと、とにかくクラクションを鳴らすのです。日本ですと、感情的にやや高まった人がクラクションを鳴らす印象がありますが、こちらは全く違います。とにかく自分の存在を相手に知らせるために鳴らしっぱなしなのです。道を曲がる時、追い越す時、相手との距離が近くなった時、とにかくプップーと鳴らし合っています。もはや呼吸レベルです。だから、通りに近い場所はとにかく、始終プップー、ピッピー、パッパーと幾重にもクラクションが重なりあいとにかく喧しいのです。

それから、色にも驚かされます。こちらの建物は基本的にコンクリートでできています。そのカラーリングが実に豊かで、可愛い。レッド、ブルー、グリーン、イエロー様々ですが、原色というよりは、ややパステル調の傾向があり、可愛らしいく楽しい印象を与えてくれます。また、女性たちのサリーも様々なカラーパターンがあって、町中が色に溢れているのです。

さて、インドの夕食も食べ終えたことですし、今日は早めに戻って休むことにします。

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